コラム

愚行権

皆さんは、仕事が休みの日、何をしていますか?
コロナ禍なので、なかなか外出にも行けず、もどかしい日々を過ごしている方も多いと思います。
休みの日にしかできない事、掃除、洗濯、買い物、庭の手入れ・・に追われ、慌ただしく一日を終えられる方、趣味に明け暮れたり、何もせずのんびりと過ごしている方など様々だろうと思います。

【目 次】

1.休日の過ごし方
2.愚行権
3.利用者の方々の権利
4.まとめ

1.休日の過ごし方

では、利用者の方々の休日はどうでしょう?
利用者の方々の余暇の過ごし方については、職員間でもよく話し合われる課題です。
近くのお店に買い物に行って、好きなおやつやジュースを買う

近隣を散歩する
駅まで電車を見に行く
どこにも行けないから、部屋でゲームをする
テレビやDVD、音楽鑑賞
ひたすら寝る・・・

コロナ禍では利用者の方々の暮らしにも制限がかかりました。
「こんな時にこそ部屋の掃除をしてみては?」
「朝から晩までテレビやゲームばかりしていないで・・・」
「1日中寝ていて、何もしなかったの?」 等という声掛けを私自身何度もしてきました。

2.愚行権

そこで、利用者さんの権利をいくつか挙げてみたいと思います。

・当たり前の生活を営む権利
・誰もが等しくサービス・支援を受ける権利
・地域社会の中で充実した生活を送る権利
・知る権利
・プライバシーが守られる権利
・苦情や意見、要望をいう権利
・チャレンジする権利
・自己決定、自己選択ができる権利

などなど・・とたくさん出てくると思います。
これらの権利が侵害されると、虐待にもつながってきます。
今回は利用者の方々の権利の中でも「愚行権」について書いてみようと思います。

愚行とは・・調べてみると、バカげたこと、愚かな行いという意味が書かれています。
「愚行権」とは、他人からみるとバカげた事、愚かな事でも、第三者に危害を及ぼさない限りは、こういった行為を邪魔されない権利。
そしてこの行為は、一般社会からみて愚かであっても、上手くいけばそのことで心地よさや、幸福感が得ることができるのです。
例えば・・
タバコやお酒。飲み過ぎは様々なリスクが生じます。ガンや依存症などにつながります。でも、当の本人はタバコやお酒で気分転換やストレス解消を得られ、生活や仕事に活力が出てきます。我慢することでかえって不調に陥るというケース。
またもっと広い解釈をすると、休日は何もせず一日中ゲームをしているケース。部屋は不衛生になり、散らかり放題となります。不衛生や運動不足でこちらも体調不良を起こしてしまうといったリスクが生じてきます。でも、当の本人はゲームをすることで気分転換やストレス解消を得られ、新たな活力につながり、日々の満足向上につながります。
以上のように、人はそれぞれ幸福感を得るために、何かしらの「愚行」を繰り返しているのです。
当の私も、休日は何をしていたか・・?と聞かれても「何もせず、ぐうたらしていた」としか答えられない日が多々あります。
愚行権の行使をしまくっているというのが現状です。

3.利用者の方々の権利

意味や価値がある事ばかりが、より良い生活、暮らしにつながるかというと、そうではないという事を、私たち支援者は知っている、気付いている事が大切だと思います。
私たち支援者は、利用者の方々の生活が、安心安全を確保できるもので、心身ともに健康で、自分らしい生活、希望や思いを実現できるように寄り添っていく事が、大きな役割の一つになっています。

皆さんがかかわっている利用者さんは、生活の中にあるいくつもの小さな選択、決定をできる環境にありますか?
生活のしづらさを感じている人はいませんか?
本人らしく、当たり前に生きる事を奪ってはいませんか?
失敗したり、チャレンジしたりする機会を奪ってはいませんか?

だからと言って、個人の自由だから何をしてもいいと「愚行」を推奨したり、「愚行」を止めさせるという訳ではなく、「愚行権」を認めながら、そのリスクもきちんと伝え、「本人にとっての最善の利益」を一緒に追及していく姿勢が大切だという事です。

4.まとめ

意思表出が難しい利用者さんもいらっしゃいます。その方たちの最善の利益は?といった意思決定支援のあり方についても整理が必要です。
大切な事は、誰にでも意思があり、選択できる権利があり、私たちはその小さなサインを見逃さず、最善の利益は何か・・を議論し合えるプロセスが重要である事を忘れてはなりません。