コラム

福祉業界のDX化推進と知的障がい者の作業について思うこと

世界的と比較して日本はデジタル後進国とも呼ばれており、デジタル普及が遅れているとされていますが、その遅れに追いつこうと急速にIT機器の導入を進めています。その流れは、福祉業界も例外ではありません。しかし、デジタルが普及することで少なからず日々作業に取り組む利用者の皆さんへ与える影響も存在します。
今回は福祉業界のDX化と当法人の利用者さんの日中作業について考えてみたと思います。

【目次】

1.DXとは?
2.福祉業界のDX化への取り組み
3.DX化と知的障がい者の作業
4.まとめ

1.DXとは?

デジタルに関する「IT」は馴染みのある言葉ですが、最近「DX」「ICT」という言葉もテレビや新聞でよく耳にする機会が多くなってきました。
それぞれの意味は以下となります。
「IT」:情報技術のことで、パソコンやスマートフォン、タブレットなどハードウェア機器やアプリや人口知能のソフトウェア、インターネットなどの通信技術のこと。
「ICT」:情報通信技術のこと。ITをどのように活用していくかに焦点を当てた技術
「DX」:デジタル技術を用いることで、生活やビジネスが変容していくこと。
コロナ禍で最も大きく変化した働き方として、在宅ワーク・WEB会議などが挙げられます。

2.福祉業界のDX化への取り組み

未だ治まる兆しが見えない新型コロナウィルス感染症により、「新しい生活様式」へと社会や生活が大きく変化してきました。冒頭にも述べたように日本のデジタル化の遅れが指摘された問題に「2025年問題(人口の4分の1が高齢者となる超高齢化社会を迎える)」があり、対応の遅れが今後の日本経済への損失が大きくなると懸念されています。これらの問題を解決するために福祉業界もIT技術を活用し経営や働き方を大きく変えていく必要があります。
福祉業界のITC化の一例として、以前の当法人のコラム(障害者相談支援事業所におけるITC化の取り組み)をご紹介させて頂きました。この業界は慢性的な人手不足であり、人の手による業務が多く存在します。これらの業務をデジタルに置き替え解消につなげていく取り組みが急速に進んできています。

3.DX化と知的障がい者の作業について

さて、福祉業界のIT化・ITC化について職員側からの視点で述べてきましたが、今度は利用者さんからの視点で見ていくことにします。
当法人に通所されている利用者さんは日中様々な作業に取り組まれています。その内容は、パン製造・販売、業務用モーターの部品絶縁処理の製造業務、贈答用の箱折作業、段ボール組み立て等の軽作業、レンタカーの洗車、手洗い洗車の役務もあり、皆さんが生き生きと活躍できるように個々の適性に応じた作業に取り組まれています。その作業全て利用者さんの手作業であり、長年培った技術力で製品に携わり、消費者に良い商品が届けられるよう日々努力を重ねています。その作業がデジタル化、AI、ロボットに置き換わる未来が訪れればどうなるでしょう。身体・精神に障がいをお持ちの方は、IT機器の操作を必要とする作業であれば、機器やソフトに配慮して訓練を重ねれば習得も可能となるでしょう。しかし、知的障がいをお持ちの方はこのような機器の利用は障がいが重くなれば一段と難しくなります。
社会構造の変化によって私たちの生活や働き方も大きく変化し、その技術を有効に利用して利便性や効率化を追求することも重要であるが、それを追求することで知的障がい者の皆さんの働く場が失われる可能性があるということに目を向ける必要があります。

4.まとめ

日本政府は迫る超高齢化社会、人口減少などの解決に向けて、社会構造の維持や経済損失を回避する為、DX化に関する施策を推進しています。デジタル機器やAI、インターネット技術の活用が今後様々な社会問題を解決する手段となっていきます。しかし、最終的に人の手が必要な製品や役務は未だ数多く存在します。それらの一部を支えてるのは通所事業所で訓練して、日々作業技術を磨いている利用者さんであることを社会に伝えていくことも、私たち障がい福祉に携わる職員の重要な役目ではないかと思っています。