コラム

強度行動障害の方の支援 看護師の視点から

知的・精神障害のある方への支援において、福祉的な視点でのコミュニケーション方法や自立に向けての援助は日頃、多くの現場で実践され、議論されていることでしょう。今回は、そんな中でも障害のある方の地域生活における、看護側からの支援に関わるアセスメントの視点をご紹介させていただきます。

【目次】
1.医療従事者として
2.看護師が担うべき役割
3.介護福祉士、生活支援員との関係

1.医療従事者として

グループホームや通所事業所において、医療従事者は少数派な存在です。また、看護師として周囲からは、治療や病気についての専門知識を多く持っている専門職者として認識されていることが多いのではないでしょうか。そんな中で、我々、看護師はどのような存在として事業所で仕事をするべきでしょうか。

私が急性期病院で働いていた頃の研修で、健康指導について学ぶ機会がありました。その時に強調されていたのが、「「指導」という言葉を使わない」という内容でした。

患者の権利擁護という視点もありますが、一相談者として対等な立場で「情報提供」することを意識して、退院後の生活で困らないよう支援するという姿勢を学びました。

なので、福祉の現場においても専門職者として、指導的な生活指導、健康指導を行うのではなく、一相談役として対等な関係性を重視しつつ、より利用者にとって分かりやすい説明を心掛けながら、自身の知識を利用者の生活に還元できるよう業務に携わっています。

2.看護師が担うべき役割

病院にいる看護師は、保助看法に則り、医師の診療の補助、入院生活における療養上の世話をその主たる業務とし、従事します。よって、治療を行える為の看護を最優先としてその役割を発揮します。

福祉施設、グループホームにいる看護師はどうでしょうか。そこは利用者にとって生活の場であるので、基本的には治療は行われておりません。あるとすれば、内服の管理、定期的なバイタルチェックなど、通院するクリニックの医師から指示を受けて、看護師や生活支援員が支援として行っています。例外的には、バルーンカテーテルを留置したまま施設生活をされている方もいらっしゃるので、カテーテル管理や導尿の補助などが稀に看護業務としてある場合があります。看護師としてはそうした生活の場が中心の施設生活において、病院であれば優先するべきことが、優先されておらずジレンマを感じる方もいらっしゃるかもしれません。また障害特性上どうしても治療上必要な行為を実行してもらえず看護師としてどのように関わるべきか分からなくなるかもしれません。また、施設職員は医療関連の知識の助けが欲しい方が多くいらっしゃいます。また、服用している薬の効能や副作用について助けが欲しいと感じている方もいらっしゃいます。

そのため、福祉施設における看護師は医療と福祉を繋ぐ橋渡しの役割を担うことになることが多いと思います。

3.介護福祉士、生活支援員との関係

医療的な知識の補助、薬の管理方法や、病気が発見された際にどこに受診すればよいかなど、施設で働く方々は看護師に助けて欲しい場面が多々あります。一方で、看護師も利用者の背景情報や、日常生活における食事、運動習慣や行動の特性など、診療や治療上必要な情報を、日中つねに接して業務をされている介護福祉士や生活支援員から情報を得たいと感じる場面が多くあります。

それはまるで、病院における医師と看護師の関係に似ているのではないでしょうか。コメディカルとして、日頃、医師がいない福祉施設において看護師は医師の代理として医療従事者としての専門性を発揮することが求められます。また、急変時に救急車を呼ぶべきなのか、病院に受診するべきなのかの判断にも助力をすることがあります。

看護師は福祉施設においては、医療機関と利用者を繋げる橋渡しのような役割であり、介護福祉士と生活支援員のよき相談役として関係構築をしていくと専門性が発揮しやすい環境となるのではないでしょうか。

4.利用者との関係性

利用者さんと看護師は、当法人においては、受診同行の際や、一カ月に一回の定期的なフィジカルチェック、往診の対応、現場職員からの相談があった際などが関わりの中心となります。なので、関係構築の機会が病院に比べるとあまりありません。その点、クリニックにおける患者の関わりと近い物があるかもしれません。一方で、しっかりと生活の場に看護師も介入することがあるので、病院とクリニックの間がイメージに近いと思います。どちらにせよ、生活の場にいる中で、病院における患者様とは違った関係性を築いていくことが求められる職場となります。職員には言えないような悩みを打明けたり、一歩下がったポジションだからこそ俯瞰的に施設生活における課題や要点を捉える事ができます。また医療従事者としての専門知識を支援のサポートの一つとして提供することで、福祉施設における支援全体を底上げしたり、支援が円滑に行えるようになる場面もあります。

特に内服の活用については利用者さんも生活支援員等福祉専門職も悩む所ではあるので、看護師の活躍の場といえるでしょう。

5.まとめ

当法人では知的障害、ダウン症、自閉症、強迫性障害、うつ病、統合失調症など知的、精神障害に跨って複数の障害や疾患をお持ちになりながら地域生活をされている方々がいらっしゃいます。そのため、看護師側も今、出ている利用者の言動が本人の本質的な訴えなのか、精神症状や知的障害による発露なのかの見極めが必要です。そのためには、それぞれの障害特性や疾患の特性を熟知していること。利用者側の言動をその人のキャラクターと決めつけ色眼鏡で判断しないことが重要です。そうした看護師が福祉施設で働いている事で、福祉専門職者も自身のアセスメントに根拠を持ちながら、利用者にとってよりよい声かけ、支援が実施できると考えられます。

今回は、数少ない福祉施設における看護師の働き方について、できるだけ簡単にお伝えさせていただきました。地域には潜在看護師の方がたくさんいらっしゃいます。

「夜勤は体力的にも厳しい。ちょっとした事ならできるかも。」

「病院勤務の復帰はハードルが高いから、リハビリ目的に看護師として働いてみたい」

福祉施設はそんな、現場から少し離れたナースにとって、いい受け皿になれるかもしれません。ご興味があれば、一度、見学、ご相談、ボランティアでも、なんでも対応いたしますので、法人本部電話番号(059-331-866)までご連絡ください。現場で働く看護師/保健師が丁寧にご説明させていただきます。

今回は、福祉施設で働く、看護師についてご説明させていただきました。今後とも、四日市福祉会をよろしくお願いします。