コラム

法人内教育計画への取り組み

昨今、新型コロナウイルスの影響によって、大学における実習(福祉、看護等)も一部オンラインでの実施が行われていたことがありました。加えて、大学進学率の上昇と大学カリキュラムの変更により、学術的な専門知識や理論的思考・初歩的な研究の実践という高等教育の普及により、これまでより一層、実務上における技術やノウハウの伝承として、OJT(on the job traning:職場内訓練)の重要性が評価されることとなりました。今回はそのOJT実施における教育計画に対して焦点を当て、その内容と効果について紹介していきたいと思います。※筆者が管轄する一部事業所での取り組みとなります。

【目次】

1.年間を通して立案される教育計画
2.実施している教育計画の実態評価するための取り組み
3.年度末に行われる主任間との教育計画実施後の年間評価
4.来年度教育計画の立案
5.まとめ

1.年間を通して立案される教育計画

G&Cホームつうきんでは、新人・異動者に対して、新しい環境でもその人それぞれに合わせた教育環境を構築し、成長を感じてもらいながら就業してもらえるよう、2022年度から毎年、教育計画を立案しています。

この教育計画はマイルストーンを設定し、期間と目標を明確にしたものをグラフ上で可視化しているものもあります。

また、事業計画に沿った形で、教育計画案を管理者に提出し、誰が誰をどのようにして教育していくのかを事業所内で明確化しています。

基本的には前年度教育計画を修了した、2年目職員が新卒者・異動者の教育担当に割り振られます。また、教育担当のスーパーバイザーとして主任役職者を配することでOJT上、教育担当が悩んだり、行き詰った際には事業所全体でフォローできる体制を構築しています。

しかし、本事業所も交替勤務制であるため、新卒者や異動者を教育担当で常にOJTが実施できるわけではありません。他の中堅職員と主任職員とが協力し、新しく職場に来られた職員の方ができるだけスムーズに職場での業務を遂行できるようサポートしていっています。

2. 実施している教育計画の実態評価するための取り組み

教育計画を立案しても、それが実際に現場で機能しているかが重要です。そのため、実施しているOJTがどの程度、成果をだしているか当事業所では「定期面談」と「業務チェックリスト」を用いて評価しています。

定期面談では、主任級以上の職員が、前期中期後期、及び、必要時に事業所全従業員一人一人に面談を実施し、業務上の負担感、課題、要望などの聞き取りを行っています。また、この面談は管理者面談とは別の為、管理者には伝えにくい事を伝えてもらう場面でもあります。

特に教育担当をしている職員と新卒者、異動者への聞き取りは教育計画の評価にも繋がっています。この時の面談の内容で、業務の調整や教育方法の見直しなどを行い、プライバシーを保ったうえで管理者へは必要な情報を上申し、決済が降りた内容について、業務へ反映させ、あらゆる業務と教育計画の見直しの実施をしております。

業務チェックリストについては、下記図のように習得が必要な業務が項目として挙げられており、完了しているのかどうかを記録できるよう作成されています。また、このチェックリストについては、職員間で共有できるようになっており、教育担当でない職員がOJTを行う際にも新卒者らがこのチェックリストを開示することで、進捗状況が分かるようになっています。面談だけでなく日頃から進捗状況を把握できることで、教育計画の実態評価ができるようになっており、一人一人の進捗状況に合わせて軌道修正を行うことができるようになっております。

3.年度末に行われる主任間で行う教育計画実施後の年間評価

年度末には、定期面談の内容と業務チェックリストの内容、日頃の就業の様子を合わせて、実施した教育計画の総合評価を行い、計画の見直し案を検討します。その後、管理者と見直し案について共有し、助言を受けながら来年度の教育計画についての見直しを行なって行きます。

4.来年度教育計画の立案

教育計画の見直しを受けて、次年度の教育計画の立案を行います。新二年目の業務チェックリストの進捗状況と、本人の面談時のOJTの感想を受けて、来年度において実施可能な教育計画を作成します。ただし、配属の変更によっては、新卒者、異動者がいない年度もあるため、その際は、実習生への現場指導を念頭に教育計画を策定していきます。その場合も新二年目が実習生などに対して対応する事となります。こうした経験についても聞き取りや評価を行い、来年度への教育計画の見直しにも活かされていくと考えられます。

5.まとめ

教育計画の策定は、人材育成の基礎と考えております。PDCAサイクルに沿って、教育計画の見直しと実施を行なって行く事で、事業所単位で業務改善、OJTの質の向上が見込まれます。一方で、こうした教育計画を継続的に行なって行く事は、通常業務の多忙さから難しい事業所も多い事かと思われます。しかし、一度、教育計画のPDCAサイクルが軌道に乗ってしまえば、一連の業務として機能していき、必然的に作成しなければいけないプライマリなものと認識することでしょう。実際に当事業所では教育担当者が曖昧だった面が改善され、かつ全職員で教育の進捗状況が可視化されたことで、教育担当者の業務負担が改善され、教育上の困難性ではなく、具体的にどう教育していくかということを中心に会議で議論されるようになりました。また、新人や異動者にとっても自身の業務習得の目標が明確になっていることで、なにが出来ないのかを根拠を持って周囲に訴えることができていると考えられます。

当事業所の教育計画は令和6年度の理事会から、報告事項として共有されるようなりました。今後も継続して取り組んでいき、より働きやすい職場となる用、活用していきたいと考えております。