支援方法について考える~ドラマ『厨房のありす』を基に
こんにちは。私は以前、「障害については様々な観点から学べる」というコラムを書かせていただきました。そのコラムから約1年経ち、様々な障がいの特性や利用者さんの支援の難しさを見てきました。前回支援方法について書ききれなかったので、今回は特に難しいと感じた「自閉傾向のある(自閉症の)」利用者さんの支援方法について考えたいと思います。今現在放送されているドラマ『厨房のありす』にも絡めて書いていきます。
【目次】
1.『厨房のありす』における「自閉症」の姿
2.「こだわり」に対する支援
3.「感覚過敏」に対する支援
4.まとめ
1.『厨房のありす』における「自閉症」の姿
簡単にあらすじについて書いておきます(『厨房のありす』)
自閉スペクトラム症(ASD)で化学が大好きな料理人・八重森ありす(門脇麦さん)が営んでいるレストランに謎の青年・酒江倖生(永瀬廉さん)が住み込みで働きにくることとなりました。こだわりが強くルールがいくつも存在するありすに、倖生が戸惑いながらも一生懸命理解をしていく話になります。
自閉症の利用者さんで難しいことと言えば、「こだわり」と「感覚過敏」に対する支援であると考えられます。実際にドラマの中でもこの2点については分かりやすく描写されていますので、共通点を探しながら支援方法を考えていきます。以下、少しお話に触れていくことがありますので、ドラマを第3話まで見てからコラムを読んでいただくことをオススメします。
2.「こだわり」に対する支援
「自閉症の方=こだわりが強い」というイメージを持っている方は多いでしょう。当法人の利用者さんでも、こだわりがいくつもある方は少なくありません。時間、順番、曜日、色、方向・・・等、多種多様です。
実際にドラマのありすは「調味料の置き場所」や「机の拭き方」、「曜日による食器の色」、「曜日による商店街での歩き方」のように様々なルールが存在していました。中々覚えられない倖生に対して、パニックになっている描写も見られました。実際にもルーティーン通りに生活をしている時に予想していないことが起きると、パニックになる方もいらっしゃいます。私も支援について悩むことが多くありました。
このような方たちが生活をしていくために、どのように支援していけばいいのか。私が行き着いた答えは精神面では『受け入れること』、行動面では『本人との相談を重ねていくこと』でした。初めの頃は受け入れることに時間がかかりましたが、「その利用者さんが長い人生の中で培ってきたものは簡単に変えることはできないんだ」と考えて生活を見ていくことによって、利用者さんがどの時間に余裕ができるのかを冷静に見ることができました。
また本人との相談を重ねていくことについては、支援のある生活をしていく上ではどうしても過ごしにくくなる場面がでてきます。特にグループホームのような共同生活では、例えばお風呂の時間が被ってしまうことなどがあると、利用者さん同士の衝突も起こることが考えられます。もちろん全部の行動を変える必要はありませんが、どうしても衝突することが考えられる時間帯については相談も必要になってくることを学びました。もっとも、こだわりが強ければ周りの利用者さんが合わせてもらうことなどの支援も考えられるので、職員さんには臨機応変な考え方と対応が必要になります。
3.「感覚過敏」に対する支援
前述で、特徴として「予想していないことが起きると、パニックになる方もいらっしゃる」と記しました。それは予定や時間など人工的・機械的なものによく言えますが、自然的な事物にも言えることがあります。それこそが「感覚」です。視覚的、聴覚的、触覚的など、感覚によって予想していないことが起きてもパニックになることがあります。強い光、明るすぎる色、大きな音、背後からの接触・・・等がそれに当たると思います。
ドラマの中では、クラクションの音や人々の話し声にパニックになるありすが描かれていましたが、倖生は咄嗟にありすの後ろから(良かれと思い)耳を塞ぐような行動をしていました。ありすからしたらパニックになることしかないと考えられますね。
聴覚過敏については、大きな音については耳を塞ぐという行動は十分に考えられます。ただし、背後から塞ぎに行くことや、前からと言ってもその利用者さんの耳をずっと塞いでいる訳にはいきません。そこでヘッドホンやイヤホンを用いることが最適で、特に人の話し声が多く飛び交う場所や車通りの多い場所で使用することが望ましいと思います。当法人でもイヤホンやイヤーマフを使用している利用者さんがいらっしゃいます。音のない支援をしていくのはほぼ不可能ですが、少しでも軽減していくように考えていくことが必要だと考えられます。
視覚過敏についてもドラマの第3話に描写されていました。街灯や蛍光灯がまぶしく見えてしまうありすは、スーパーの中ではサングラスをかけていました。視覚過敏の例としては他にも、真っ白の紙が長時間見ることができないこともあるようです。この例での難しさとしては、自閉症の方は聴覚的よりも視覚的に、文字で表すとより情報を取り込みやすい方が多いようです(「視覚優位」)。しかし白い紙が長時間見られないとなると、支援だけでなくコミュニケーションにも支障が出ることが考えます。なるべく真っ白ではない淡い色の紙を使うことや、タブレット等を使用するのであれば画面を少し暗くしてみる等、配慮が必要になってきます。これらに関してもやはり、「本人との相談」は大事になってくると考えられます。
4.まとめ
ここまで読んでいただきありがとうございました。ドラマとの共通点を探しながら支援方法を考えたため、少し長くなってしまいました。
自閉症に限らず、知的障がいを持つ方の支援は常に考えるべきことがたくさんあります。当法人でも利用者さんにとって最適な生活が出来るよう日々支援の試行錯誤をしています。施設職員がどのようなことを考えて支援をしているかを少しでも知っていただければ幸いです。
また、最近は「障がい」を題材にしたドラマなどが増えてきているように思います。その人の考え、周りの関係のあり方、これまでの成長過程などに注目して見ていくと、また違った見方になり障がいの理解にも繋がっていくと思います。自分ならどのように関わっていくかを考えて見るのも良いかもしれませんね。