コラム

給与栄養目標量の設定方法

〝健康的な食事とは何か〟このように問われた場合、どのような食事を思い浮かべるでしょうか?野菜類、海藻類、豆類など、健康的なイメージがあるものを用いた食事や、栄養価の高い食べ物を積極的に用いた食事など様々かと思います。しかし、実際に健康的な食生活を送ろうとするならば、〝何を〟〝どれくらい〟食べればよいのか難しいところですよね。給食施設では、「日本人の食事摂取基準」というガイドラインを用いて栄養価の目標量(給与栄養目標量)を決定しています。給与栄養目標量を満たすように献立作成を行うことで、栄養バランスの整った健康的な食事が考えられています。今回のコラムでは、当法人の栄養士が「給与栄養目標量の設定」についてまとめさせていただきましたので、ご覧いただければと思います。

【目次】
1.「日本人の食事摂取基準」とは何か
2.推定エネルギー必要量の算出方法
3.エネルギー産生栄養バランスの算出方法
4.微量栄養素の設定方法
5.まとめ

1.「日本人の食事摂取基準」とは何か

厚生労働省より、策定されている「日本人の食事摂取基準」には、〝健康な個人及び集団を対象として、国民の健康の保持・増進、生活習慣病の予防のために参照するエネルギー及び栄養素の摂取量の基準を示すものである〟と記載されています。エネルギーや栄養素の摂取量は、年齢や性別ごとに記載されており、この量を摂れていれば不足する可能性が低いという値(推奨量、目安量)や、これ以上摂取すると生活習慣病のリスクが生じる値(耐用上限量)など、様々な指標で示されています。

2.推定エネルギー必要量の算出方法

給与栄養目標量を設定するにあたり、まず始めに行うことは「推定エネルギー必要量」の算出です。生活習慣病の予防は、エネルギー量の過不足に最も大きく影響されます。どれだけ、ビタミンやミネラルなどの不足しやすい栄養素を十分に確保できていたとしても、食べ過ぎていれば生活習慣病を予防する事は出来ません。そのため、推定エネルギー必要量を正確な値に近づけるように算出する必要があります。

推定エネルギー必要量の計算方法は、「推定エネルギー必要量(kcal/日)=基礎代謝量(kcal/日)×身体活動レベル」で求められ、基礎代謝量は、「標準体重(㎏)×基礎代謝基準値(kcal/㎏/日)」で求められます。給食施設は集団を対象としているため、推定エネルギー必要量は平均値が採用されます。「基礎代謝量」「基礎代謝基準値」は、性別および年齢によって区分されており、集団の特性が大きく異なる給食施設であれば、エネルギー量を食種ごとに分ける場合もあります。

3.エネルギー産生栄養バランスの算出方法

食べ物から摂取するエネルギー源には、主に蛋白質、脂質、炭水化物、この3つの栄養素があります。総エネルギー量のうち、これらの栄養素が占める割合を「エネルギー産生栄養バランス」といい、頭文字をとってPFC比率とも言います。食事摂取基準には、様々な根拠をもとに、PFC比率の範囲が示されており、蛋白質13-20%、脂質20-30%、炭水化物50-65%とされています。つまり、総エネルギー量を100%とした場合の内訳を考えることが必要になります。

4.微量栄養素の設定方法

エネルギー産生栄養素(蛋白質、脂質、炭水化物)に対して、ビタミン類やミネラルのことを微量栄養素と言います。ほとんどの微量栄養素が不足しやすく、食事摂取基準では「カルシウム」「食物繊維」の摂取不足が指摘されています。不足しないようにするという考え方が重要になるため、「推奨量(ある対象集団において、ほとんどの者が充足する値)」を給与栄養目標量として採用します。しかし、全ての微量栄養素に推奨量が設けられているのではなく、十分な科学的な根拠が得られていないものに関しては「目標量(生活習慣病の発症予防のために目標とすべき摂取量)」が設けられています。

5.まとめ

今回は「日本人の食事摂取基準」を用いた給与栄養目標量の設定方法についてまとめさせて頂きました。しかし、あくまで「推定」であるということを忘れてはいけません。実際に給与栄養目標量に沿って食事を提供し、適切であったかという評価は必要です。例えば、体重が目標体重を維持できているか確認することでエネルギー量の評価を行う事が可能ですが、実際に提供して初めてわかることです。実施と評価を繰り返し真の値に近づける作業が重要であることを念頭に置いた上で、参考にしていただけばと思います。

参考
・江崎グリコ
・森永製菓株式会社