福祉支援での「ミる」こと「キく」こと
私は、大学で障害福祉と保育を専攻していました。座学をベースに、模擬授業(模擬保育)や現場実習を通し福祉について学びました。卒業後はこの四日市福祉会の障害者福祉の現場で働いております。今回は、日々の業務で気付いた事、大切にしている事をお伝えしたいと思います。
【目次】
1.「ミる」支援
2.「キく」支援
3.まとめ
1.「ミる」支援
「ミる」には様々な漢字がありますが、まず思い浮かぶのは「見る」ではないでしょうか。辞典で「見る」を調べると、「見る」に並び、「観る」という漢字も記載されています。では、この「見る」と「観る」ではどのような違いがあるのでしょうか。簡単に説明をすると「見る」は受動的に視界に入ること、「観る」は意識をして視線を向けることです。また、「ミる」には、じっくりと注意深く見る事や、視線を注ぐことを表す「視る」という漢字もあります。「観る」と意味合いが似ていますが、「視る」ほうが、より細かく見ているニュアンスを持ちます。このように、「ミる」には色々な漢字がありますが、福祉の現場では、どの「ミる」が理想的なのでしょうか?
利用者さんは、色々な方法でコミュニケーションをとりながら、支援者へ自らの気持ちを伝えます。発語のない方や、自分の気持ちを上手く表現できない方もみえます。そこで、支援者側は「ミる」ことが重要になってきます。その時の動きや声のボリュームなど普段の様子との違いから相手の気持ちを汲み取ります。ただ「見る」だけでなく、よく「視る」ことで、利用者さんのニーズを把握することができ、それが良い支援へ繋がって行くのだと思います。支援を行う上で、「ミる」ことは非常に大切な技法だといえます。
2.「キく」支援
「キく」にも「ミる」と同じように、色々な漢字があります。まずは、「聞く」が最初に浮かぶのではないでしょうか。自然に耳に入ってくる音をきく場合は「聞く」を使います。どちらかというと、聞こえてくる音に対して、受動的なニュアンスです。もうひとつ「聴く」という漢字があります。こちらの場合は、音の持つ意味を理解しようとして、意識的に耳を傾ける場合に使います。話の内容や相手の気持ちを理解するため、積極的に聞こうとする様子です。漢字の意味の違いから考えると、福祉の現場では、もちろん「聴く」が理想的だと言えます。また、「聴く」を使った言葉に「傾聴」という言葉があります。傾聴とは、人の話にじっくりと耳を傾けるコミュニケーションの技法です。相手の話を受け止め、共感し、需要することが「傾聴」です。福祉の現場では、単に話を聞き理解するのではなく、話し手の気持ちに寄り添い、尊重することがとても大切です。
3.まとめ
私には、2歳と6歳の子どもがいます。6歳の子はしっかりと自分の気持ちを伝えられるようになりましたが、2歳の子は言葉では上手く気持ちを伝えられないので、泣く、叫ぶ、笑う、知っている数少ない言葉を何度も繰り返すという方法で感情を伝えます。何かを要求してきても、その何かが分からない時があります。その時の私の頭の中は、日頃の子どもの様子を思い返し、“この人形を持っている時はこの遊びをしているな…”“この言葉はこの前あの場面でも言っていたな…”とこれまでの経験や記憶を頭の中でぐるぐると巡らせ、要求に応えてあげようと必死になっています。それでも分からない時もありますが、だいたいは彼女の要求に応える事ができます。やはり、それは、日頃から、子どもの様子を視て、聴いているからだと思います。
福祉の現場で支援を行う時も同じではないかと思います。学生時代は、食事の介助、入浴介助、排せつ介助のような身の回りの介助をすることが支援だと思っていました。しかし、実際に支援をする立場になり、もちろん、食事や入浴など身の回りの手助けをすることも支援ですが、まずは、しっかりと視て、聴いて、相手のニーズを把握した上で、気持ちに寄り添うことが、支援のベースだと感じています。視ること聴くことで、相手の事をよく知ることがニーズに沿った質の高い支援の実現に繋がることだと思います。これからも、視て聴く(傾聴)支援を大切にし、日々の業務に努めていこうと思います。
参考