栄養マネジメント加算について(様式例あり)
2022年3月18日のコラム「栄養士にとって栄養ケア・マネジメントとは)」を修正しました。
障害者及び障害児(以下「障害者等」という。)が自立して快適な日常生活を営み、尊厳ある自己実現をめざすためには、障害者等一人ひとりの健康・栄養状態の維持や食生活の質の向上を図ることが不可欠であり、これまで個別の障害者等の健康・栄養状態に着目した栄養ケア・マネジメントの実施を栄養マネジメント加算として評価している。(厚生労働省通知 障障発0406第1号より抜粋)
【目次】
1.栄養ケアの目標
2.栄養ケアの目標栄養マネジメント加算
3.栄養ケア・マネジメントの手順
4.まとめ
1.栄養ケアの目標
・生活の質の向上(食事、食生活)
・健康の維持増進
・疾病の改善&重症化の予防
栄養ケアで目指すことはいくつかあると思いますが、上記の3点は代表的なものです。
2.栄養マネジメント加算(12単位/日)
介護保険施設では廃止されましたが、障害者支援施設では栄養マネジメント加算があります。
加算取得に向けた準備は、体制づくりや加算の申請等が必要です。
誰が何を担当するのか。どこに書類やデータを保管するのか。同意はどのように得るのか。情報はどのようにして共有するのか。いつから加算を算定し、いつから情報収集や準備をすれば間に合うのかなどあります。加算に向けた準備は施設の人員や管理栄養士の経験や知識によって分担が決まると思うので、施設によって異なります。体重やリスク判定等の栄養管理や、栄養計画書の印刷等の加算に関わる書類の作成は栄養ケアのソフトを活用すると便利です。
栄養ケアのソフトは給食管理ソフトや、障害福祉ソフトからオプション購入する必要があります。栄養ケアソフトの会社を障害福祉ソフトと同じ会社にすると、栄養ケア提供記録などが支援員の記録から引用できるなど支援員と簡単に情報共有できる場合があります。パソコンも含めて、ソフトの導入は費用がかかりますので、施設管理者とよく相談して決めると良いでしょう。
3.栄養ケア・マネジメントの手順
・栄養スクリーニング・アセスメント・・・栄養状態の把握、栄養に関する問題の把握と原因の理解
・栄養ケア計画の作成・・・目標の設定・問題解決するのは管理栄養士一人だけではない
・説明・同意・・・利用者本人やその家族に対して行う
・栄養ケアの実施、チェック・・・多職種共同
・モニタリング・・・総合的な評価判定
以降②→⑤の手順を繰り返す
①スクリーニングとは、BMIや体重変化率、食事摂取量、栄養補給法、褥瘡の有無、栄養補助食品の有無から栄養状態の把握を行う事です。BMIとは、 [体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で算出される値。肥満や低体重(やせ)の判定に用いるものです。
アセスメントとは、スクリーニングの内容に追加して、本人の意向、食生活の状況や課題、他職種からの意見、疾病や褥瘡の状態を把握し、食事についての課題や改善すべき点を見つけます。
(下は栄養・摂食嚥下スクリーニング・アセスメント・モニタリング様式例)
②栄養ケア計画書では、アセスメントの内容から本人の意向を実現するために具体的な目標を設定します。目標を達成するためにどのような支援を誰が、どれくらいの頻度で行うのか記載します。栄養ケア計画は施設の支援計画と一体的に考えます。(下は栄養ケア計画書様式例)
③説明・同意では、作成した計画を説明し、納得してもらい同意の証として、サインをもらいます。栄養マネジメント加算は同意を得た日から算定できます。同意のサインは本人または家族からもらいます。施設の支援計画書のサインをもらう人と同じが良いでしょう。
④栄養ケアの実施、チェックでは、目標達成のための支援内容を実施した上で、記録を残します。この記録は重要で、「栄養ケア計画通りに、支援を実施しています。」という記録になります。
⑤モニタリングでは、栄養ケア計画による支援の内容と方法が適切だったのか、効果があったのか、目標達成度や改善状況、総合的な評価から栄養ケア計画の継続や修正、または終了の判断をします。モニタリングが、継続や修正された栄養ケア計画のアセスメントとなる為、参考様式では「スクリーニング」「アセスメント」「モニタリング」が1つにまとまっています。
目標があいまいだと、目標達成度が判断できなくなるため、目標を明確に(具体的な目標を設定)します。個人的には数値目標を掲げることで、評価しやすくなると思います。体重の変化や食事摂取量、血液検査の数値が分かりやすいと思います。
数値で示すと、利用者や家族、他職種にも分かりやすいので、説明しやすく、次のプランの目標も立てやすくなります。
4.まとめ
ポイントを押さえて書類作成をし、記録を残すことはもちろん重要ですが、利用者のために栄養に関わる職員がチームとなって、栄養支援を継続することが大切です。
同じ栄養支援をしても、すぐに結果が良くなる方もいれば、すぐに改善されない方もいます。改善が認められなかったとしても、説明した手順通り栄養ケア・マネジメントを実施すれば、モニタリング後に計画の修正をするはずなので、個人に合わせた栄養支援になっていきます。つまり、利用者の数だけ栄養ケア計画書ができるのです。
はじめのうちは、得られる情報が少なく、何を聞けばよいのかわからないため、特に低栄養のリスクが低い方は似たようなプランになるかもしれません。しかし、時間とともに得られる情報が増えると、栄養支援の選択肢が増えます。試行錯誤しながらも栄養支援を継続的に行うことが、一人ひとりの健康状態や栄養状態の維持や食生活の質の向上を図ることとなり、利用者が自立して快適な日常生活を営み、尊厳ある自己実現を目指すことに繋がると思っています。
<再掲>
障害者及び障害児(以下「障害者等」という。)が自立して快適な日常生活を営み、尊厳ある自己実現をめざすためには、障害者等一人ひとりの健康・栄養状態の維持や食生活の質の向上を図ることが不可欠であり、これまで個別の障害者等の健康・栄養状態に着目した栄養ケア・マネジメントの実施を栄養マネジメント加算として評価している。
参考・引用:
厚生労働省通知 障障発0406第1号 令和3年4月6日
「栄養マネジメント加算、経口移行加算、経口維持加算、口腔衛生管理体制加算及び口腔衛生管理加算に関する事務処理手順及び様式例の提示について」
新潟県福祉部障害福祉課
奈良県福祉医療部障害福祉課
奈良市障がい福祉課
京都市保健福祉局障害保健福祉推進室
名古屋市健康福祉局障害支援課