コラム

人の価値観から利用者支援を考える

今回のコラムは、人が考えるそれぞれの価値観から利用者支援を考えていきたいと思います。

1.価値観とは
2.対人援助に必要な事
3.支援における価値観
4.最後に...

1.価値観とは

「価値観とは、何に価値があると認めるかに関する考え方。価値(善・悪、好ましいこと・好ましくないこと、といった価値)を判断するときの根底にとなるものの見方。ものごとを評価・判断するときに基準とする、何にどういう価値がある(何には価値がない)、という判断。」と辞書には記載されています。

2.対人援助に必要な事

対人援助職をしていく上で必要となるのが「自己覚知」です。自己覚知についてはバイスティックによって以下のように述べられています。

「受け止める上で障害になるもの障害となるものの源泉は、ほとんどつねに一つである。それは、いくつかの領域におけるケースワーカーの自己理解の欠如である。この欠如がクライエントのもっている現実認識を見誤らせ、クライエントをありのままの姿で捉える事を妨げる。」
と説明されています。

つまり、対人援助を行なう上で自分の考え方や価値観による先入観、偏見などが入らないようにする為に自分自身を理解しておくという事です。

3.支援における価値観

支援の中では必ずと言ってよいほど価値観のよって左右されてしまっている事がたくさんあります。しかしながら人は自分以外の価値観をなかなか受け入れがたいものです。そういった事が職員同士の支援の方向性の違い、利用者の考えに対する否定を生み問題として取り上げ怒りに変わるのではないでしょうか。

そこでよく考えてみてください。自分の価値観が万人に通じる事などありえなという事です。相手には相手の価値観が存在しています。価値観の押し付けを行うのではなく、相手の言い分、自分の言い分を折り合いのつけられるところを探して折衷案を見つける事が重要です。その為に自分の価値観を見つめてみて下さい。。

何度も言っていますが職員と利用者ではもちろん価値観は違うものです。人それぞれ価値観が違う事を支援の中にも当てはめてみるとごく当たり前の事だという事に気づくと思います。例えば、ある利用者がお菓子の空袋を大事に集めていたとします。他の人(他の利用者や職員)からすればゴミかもしれません。しかし、そのお菓子の空袋を集めている利用者からすればとても大事な物かもしれません。そこで支援者に考えて頂きたいのが、ゴミとして捨てさせる事が支援なのか、その大事にしている他人からすればゴミに見える物をどうしたら大切に保管させてあげる方法を考えるのが支援なのか、という事です。

どちらも正しく、また間違いとなる答えだと思います。なぜなら、そこに価値観が存在しているからです。ゴミは捨てるもの、集めるなんて汚いと思う事も当たり前の考えですし、ゴミだけれどもその人が清潔に保管できるように考えるのも一つの考えです。支援として考えたとしてもどちらも正しく、間違いである事に変わりません。支援の中で重要となるのはその利用者の価値観に対して支援者の価値観が押し付けになっていないかをよく考えて支援を行う事です。

4.最後に...

「価値観」は人それぞれが持つ自分の中にある様々なものごとに対しての基準だと考えます。どのような場面でも必ず価値観は存在しています。
新型コロナウイルスも5類になり「マスクをする、しない」といった事もささやかれている中でそれぞれ人の考えのもと行いましょうという国の考えが示されているにも関わらずトラブルが起きたりしています。こういった事からも価値観のずれが存在している」からでしょう。自分の好きな物が否定されれば腹も立つでしょうし、反対に褒められたりすれば嬉しく思うはずです。価値観への否定と共感がどの場面にも存在しているから喜びもあれば怒りもあるという事だと思います。自分の考えや好きな物が否定されたら?一緒に好きだと言ってもらえたら?考えが否定されたら?共感してもらえたら?この単純で常に身近にある感情を忘れずに利用者支援が出来るように考えてみて下さい。

引用 ケースワークの原則 援助関係を形成する技法 誠信書 房F.P.バイスティック