自閉症の感覚過敏を考慮したデザインについて考える
私は現在、障がいを持つ方の共同生活のサポートを行なっています。今年4月に入社したばかりで障がい福祉分野については詳しくないですが、今回は私が好きなデザイン分野と絡めて、自閉症を持つ方々にできる配慮について考えていこうと思います。今回着目したのは、自閉症の方の症状としてよくあげられる感覚過敏と感覚鈍麻です。
【目次】
1.自閉症の感覚特性(感覚過敏と感覚鈍麻)
2.自閉症の人が苦手とするデザイン・私たちができる工夫
3.自閉症の感覚過敏について知り、私が行なったこと
4.まとめ
1.自閉症の感覚特性(感覚過敏と感覚鈍麻)
生活に困難さが生じるほど、感覚が非常に敏感であることを「感覚過敏」といいます。反対に、感覚に著しい鈍感さがあることを「感覚鈍麻」といいます。
また困難さや苦痛を感じる以外に、好きな感覚を得るために常同行動をすることがあります。
【感覚過敏】
感覚過敏には、特定の音に苦痛を感じる「聴覚過敏」、特定の肌触りの衣服にこだわる・嫌がる「触覚過敏」、光や色・物の動き等の視覚情報に過敏性がある「視覚過敏」等があります。
【聴覚過敏】
会話の声に対して過剰に反応してしまい、疲弊する
【触覚過敏】
人から触られることに抵抗感がある
【視覚過敏】
・白い紙を見るとチカチカして、書いてある文字が読みづらい/ぐったり疲れて頭痛やめまいが起こる
・太陽光や照明が異常に眩しく感じ、痛みを伴うこともある
・目から入る情報が多いと混乱したり、体調を崩したりすることがある
他にも、嗅覚過敏や味覚過敏があります。
【感覚鈍麻】
・骨折しても痛みに気付かない
・暑さや寒さを感じず、真冬でも薄着のまま出かけようとする
今回は上記の感覚特性のうち、視覚過敏に焦点を当てて考えていきます。
自閉症の感覚特性については、ハッピーテラスのホームページで清野先生がより詳しく、とてもわかりやすく説明しているので是非ご覧ください。
感覚特性とは?感覚過敏・鈍麻の症状は?|自閉症スペクトラム障害|発達に課題のあるお子さまのためのコラム
2.自閉症の人が苦手とするデザインとは
前項であげた視覚過敏の症状を見ていきます。
◇白い紙を見るとチカチカして、書いてある文字が読みづらい/ぐったり疲れて頭痛やめまいが起こる
この症状が起こりやすい例としては、お知らせや企画書などがありますね。ポスターでも、見やすさを重視したものは白い背景にシンプルな装飾のものが多く見られます。
では、なぜ白い紙だと起こるのでしょうか。
京都大学のホームページでは、自閉症児の色彩の好みについての研究成果で、黄色が苦手な傾向にあることが報告されています。また、苦手とする色の特徴として、輝度(色の明るさ)が高く刺激が強いことがあげられています。黄色は人気の色ですが、刺激が強いことで自閉症の人にとっては苦痛に感じることがあるということです。視覚過敏のない人でも長時間黄色のものが視界にあると、疲れてしまうということが知られています。そのくらい黄色は輝度が高い色なのです。
白は輝度が最大の色です。輝度が高い色を見ることで誰でも視覚が受けるストレスが大きくなります。その受けるストレスが周囲の人よりも更に大きくなると、頭痛やめまいが起こったり、苦痛を感じたりしてしまいます。
◇目から入る情報が多いと混乱したり体調を崩したりすることがある
情報量の多さといえばスーパーのチラシ。注目させるデザインとして代表的ですね。ですが、少々見づらさを感じることもあります。「商品を一つひとつ見たい!」というように興味があるなら良いですが、そうでないなら目に飛び込むのはうっとうしさを感じることもあるかと思います。
こちらの症状を抑える工夫としては、箇条書きを活用するのが良いと思います。また、情報量が少し多くても、番号や矢印を使って順番をはっきり示すことで情報量を多く感じさせないようにするという方法もあると思います。
3.自閉症の感覚過敏について知り、私が行ったこと
以上の考えを元に、利用者さんの部屋に飾るポスターを作成しました。内容は利用者さんの半期の目標です。5月にもポスターを作成していますので、その頃と比較して工夫した部分を紹介します。
※5月作成
◇当時工夫したこと
・興味を引くためにイラストをたくさん使う
・余白は少ない方がよい
・1枚にまとめる
「余白は少ない方がよい」というのは、私が普段絵を描いている時に意識していることです。一緒に絵を描く先輩から教わりました。あえて余白を多くするデザインもありますが、私の場合は余白を少なくすることを大切にしていました。
※11月作成
◇工夫したこと
・真っ白な箇所がある場合は、全体の色に合わせたとても薄い色に変える
・情報量が多くなりすぎないよう、簡潔に書く
・目標は1枚に1つ
今回は目標を振り返れるようにするためのポスターだったので簡潔に書くことができましたが、説明や更に具体的な行動を書く必要がある場合は別途説明書を作ったり、その行動を行いながら見ることのできる場所に貼ったりするのがよいと思います。(洗面台に歯磨きの手順・レンジの近くの壁に温める時間一覧)
4.まとめ
今回は視覚過敏に対する工夫を、利用者さんの目標ポスター作りを通して紹介しました。白や黄色等の輝度が高い色を使うのは避けた方が良いことを説明しましたが、その人が好きな色を使うのが一番だと私は思います。その中で、ちょっとした工夫や配慮を考えることができるといいなと思っています。
私は福祉分野について詳しくないので至らぬ考えがあるかもしれませんが、少しでも参考になったり興味を持っていただけたりしたら幸いです。
【参考】
・感覚過敏の症状や原因、対処法、発達障害との関連性についてマンガで解説
・自閉症児は黄色が苦手、そのかわり緑色を好む ―発達障害による特異な色彩感覚―
・「感覚特性」とは?感覚過敏・感覚鈍麻ってどんな症状?